技術記事
発電所の復水ポンプ用ダイヤフラムカップリングのスペーサー交換:長さ、取付距離、ボルト接続部の確認方法
シール交換や振動点検で復水ポンプを止めたところ、ダイヤフラムカップリングのスペーサーに割れや腐食があったり、リーマボルトが欠けていたりすることがあります。ハブは問題なく、モーターの芯出しも済んでいるのでどちらも動かしたくない、となると、同じすき間にそのまま収まるスペーサーが必要になります。長さ、フランジの位置決め、ボルト接続部が残すハブと合っていることが前提で、外径が同じに見えてもそれだけでは判断できません。以下では、ダイヤフラムカップリングのスペーサーを手配する際に、何を測り、何を確認し、何を送ればよいかをまとめます。

まず何を交換するかを決める
最初に交換範囲を決めます。範囲によって接続部のリスクが異なるためです。よくあるケースを下表にまとめます。
| 交換範囲 | そのまま残す部品 | 向いているケース | 確認が必要な項目 |
|---|---|---|---|
| ダイヤフラムパックのみ | ハブとスペーサー | パックの割れやフレッティング、スペーサーのフランジと穴は健全 | パック厚さ、積層構成、穴配置、ブッシュとボルト |
| スペーサー組立品 | ハブと芯出し状態 | スペーサーの損傷、またはパックが固着 | 長さ、インロー、ボルト配置、パック構造、バランス |
| カップリング一式 | 軸のみ | ハブの摩耗・損傷、図面なし、互換性が不明 | 軸穴、キー溝、全体寸法、許容回転数 |
メーカー間の互換性は当然のものではありません。外径とボルト本数が同じでも、インローのはめあい、パックの積み上がり寸法、ボルト構造が違うことがあるため、既存ハブと新しいスペーサーの組み合わせは実際の構造で確認してください。カップリング全体を選び直す場合は、ポンプ・ファン用ダイヤフラムカップリングの選定ガイドが参考になります。
すき間を測る:軸端間距離、スペーサー長さ、フランジの位置
最も重要な寸法は、ポンプロータとモーターが運転位置にある状態での軸端間距離です。あわせて各ハブが軸端からどれだけ離れているかも記録してください。スペーサー長さは軸端のすき間だけでなく、ハブフランジ面間の距離で決まるからです。立形の復水ポンプではカップリングがロータの軸方向位置を決めていることも多いので、旧スペーサーに調整板や調整ナットがあれば、何かを緩める前にその設定を記録してください。
次に、両方のハブフランジの位置決め部を測ります。インロー径、インロー深さ、各ハブがオス側かメス側かを確認してください。インローが少し長いとパックを過度に圧縮しないとスペーサーが入らず、短いとフランジの心出しをボルトだけに頼ることになります。
続いてボルト接続部を記録します。ダイヤフラムカップリングは同じピッチ円上にハブ側とスペーサー側のボルトを交互に配置するのが一般的なので、ピッチ円径、穴数と穴径、どの穴がどちらの部品に属するか、ボルトがリーマボルトかブッシュ付きの通しボルトかを書き留めてください。
外径だけでは足りない理由
ダイヤフラムパックは、外形から想像する以上にはまり合いを左右します。パック厚さ、積層枚数、一枚あたりの板厚が、フランジ間の軸方向の積み上がり寸法とボルトの締付け長さを決めます。厚さの違うパックを入れると、スペーサーが入らないか、入ってもパックがたわんだ状態になります。
多くのカップリングは、規定の軸方向プリストレッチまたはプリコンプレッションを与えて取り付けるよう設計されており、運転時のポンプとモーターの熱伸びでパックが中立位置に近づくようになっています。この余裕は図面上のスペーサー長さにすでに含まれているため、旧品の実測寸法をそのまま写すと、測定が正確でも間違った長さになることがあります。
締結部品にも違いがあります。リーマボルトには決まった円筒部長さと公差があり、ブッシュや座金はパックを特定の形で締め付けるための形状をしていることがあり、締付けトルクはボルトの強度区分とねじで決まります。旧ボルトを新しいスペーサーに使い回したり、別構造の新しいボルトを組み合わせたりすると、パックの早期割れの原因になりやすいです。
回転数、バランス、組付け方向、軸方向スペースを確認する
発注前に、設備の担当者と次の項目を確認してください。どれか一つでも抜けると、寸法が正しいスペーサーでも使えないことがあります。
- 回転数: 銘板回転数だけでなく、駆動側が到達しうる最高回転数に対して定格を満たしていること。
- バランス: スペーサー単体でバランスを取るのか、パックとボルトを含めた組立状態で取るのか、ポンプ仕様書の要求は何か。
- 合いマーク: 旧品のバランスマークや方向マークは引き継げないため、新しいスペーサーには独自のマークが必要です。
- 組付け方向: どちらのフランジがポンプ側か、ボルト頭がどちら側か、カップリングガードとのすき間。
- 軸方向スペース: パックをインローを越えられるだけ圧縮できるか、または取付用の圧縮ボルトが設けられているか。
- 熱伸び: 冷間時と運転時のすき間は異なるため、設計で想定したプリストレッチまたはプリコンプレッション量を確認すること。
ポンプをインバーターで駆動している場合は、モーター銘板ではなくインバーターの最高回転数で確認してください。定格と駆動条件の比べ方はカップリングの許容回転数と危険速度のスクリーニングで解説しています。
見積もり依頼時に送っていただきたい資料
取付状態のカップリングを両側から撮った写真、スペーサーとハブの刻印のアップ、ボルト頭とナット、積層が見えるパックの端部、損傷箇所そのものの写真をお送りください。ポンプとモーターのデータシート、カップリング図面があれば一緒にお願いします。そのほかは下の測定表で揃います。
| 項目 | 測定箇所 | 備考 |
|---|---|---|
| 軸端間距離 | ポンプ軸端からモーター軸端まで | ロータは運転位置 |
| ハブ位置 | 両側の軸端からハブフランジ面まで | ハブは取り付けたまま |
| スペーサー全長 | フランジ面からフランジ面まで | 調整板を含む |
| インロー | 両ハブのインロー径と深さ | オスかメスか |
| ボルト配置 | ピッチ円径、穴数、穴径 | ハブ側の穴とスペーサー側の穴を区別 |
| 締結部品 | ボルト、ブッシュ、座金、ナットの寸法 | 強度区分と円筒部長さ |
| ダイヤフラムパック | 厚さと積層構成 | 新品または損傷のないパックで測定 |
旧スペーサーが曲がっている、伸びている、焼損している場合は、重要寸法をそこから取らないでください。ピッチ円、穴径、インロー寸法は残すハブフランジから測り、スペーサー長さは軸端間距離とハブ位置から求め、損傷品は照合用にとどめます。
当社のダイヤフラムカップリングにはJMII、JMIIJ、DJM、SJMの各シリーズがありますが、既存ハブに合わせるスペーサーについては、カタログサイズを無理に当てはめず、お客様の測定値と図面をもとに製作します。測定結果から元の設計に確実に合わせられないと判断した場合は、その旨をお伝えし、カップリング一式の交換をご提案します。
FAQ
別メーカーのダイヤフラムパックを使えますか?
厚さ、積層構成、穴配置、穴径、ブッシュとボルトの構造がすべて一致する場合に限ります。通常は元の図面か旧パックが手元にあることが条件で、外径とボルト本数が同じというだけでは不十分です。
旧スペーサーが損傷しています。長さはどこから決めればよいですか?
軸端間距離と両ハブの位置から求め、パック厚さと設計上のプリストレッチ量を加味します。ポンプ図面やカップリング図面があればそちらのほうが確実で、損傷したスペーサーは照合用です。
交換用スペーサーにバランス取りは必要ですか?
復水ポンプでは通常必要で、要求はポンプ仕様書で決まっているのが一般的です。スペーサー単体でバランスを取って互換性を持たせるのか、パックとボルトを含めた組立状態で取るのかを確認し、取付時にはバランスマークを合わせてください。
停止期間に合わせてスペーサーやパックの交換を計画されている場合は、写真、測定表、お手元の図面をお送りください。図面からでも、旧品の写真と実測寸法からでも製作でき、動バランスを行って動バランス検査成績書と寸法検査成績書をお付けします。標準型式の納期は通常15~25日で、非標準のスペーサーは図面確認後に納期をお知らせし、主要な加工を社内で行っているため急ぎの案件は優先して手配できます。図面を送って見積依頼
選定または既設品交換の技術確認が必要ですか?
出力、回転数、軸径、キー溝、取付寸法、図面または既設品写真をお送りください。使用条件を確認してから型式と見積を検討します。
